☆☆ 小説作法『天気の好い日は小説を書こう』三田誠広

天気の好い日は小説を書こう―ワセダ大学小説教室
三田 誠広 / 集英社
ISBN : 4087471756


 芥川賞受賞者の作者が早大文学部で小説創作を教えていた時の講義録。通年講義の最初の数回だけが収録されていて、作者も断っているとおり内容は基礎の基礎の基礎。小説作法の入門書という点では☆3つ半くらいの評価。具体例が多く分かりやすい。教え方は上手いのだろう。読み物としても楽しい。ただし特に目新しいことが書いてあるわけではなく素直に感動できるのは中学生くらいまで。さらに言えば真面目な文学部生には不必要な内容。むしろ「GTO」や「高校教師」的な人生教師のノリが必要だろう。笑

 社会や時代というものを強く意識している作家である。意気込みは買うが実を伴っていない。その悲哀をあえて描こうとしているというのなら成功しているのだろうけれども。

 一点。花、和歌、歌舞伎、カラオケなどを例に大衆的だが閉鎖的な「わび」「さび」の側面を持った芸術の効能を説き、私小説の奥深さにも言及するあたりの分析は面白い。
[PR]
# by gogayuma | 2005-01-22 04:39 | 文芸/小説作法

☆☆+ 映画『海の上のピアニスト』ジュゼッペ・トルナトーレ監督

海の上のピアニスト
/ パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
ISBN : B0001J0BTK


 ビデオ屋でみかけた時に友人から薦められていたのを思い出し裏面を読むと『ニュー・シネマ・パラダイス』と同じ監督であることが判明。これは僕が一番好きな映画で次点は『ショーシャンクの空に』『ビッグフィッシュ』と続くのだがこれらはまたの機会に。

 演者の顔は主人公よりも敵役であるジャズ創始者の方が好き。主人公の悩む表情は決して悪くないけれど二人とも別の役柄をやらせても面白そう。とりわけ味を出しているのは進行役のコーン(トランペット吹き)。目はもちろん細かい表情の変化も見ていて飽きない。トランペットへの思いの移り変わりや主人公への思いの表現が絶妙で引き込まれる。

 帽子を投げたのは何かの意思表示だったのだろうが、いいから降りろと言いたい。理解できても共感は決してできない。弱い。有限を用いて無限の表現をする生。無限に飲まれたエンドレスの旅としての生。終末観のない「存在する人間」は後者を選ぶのではないか。
[PR]
# by gogayuma | 2005-01-22 04:37 | 映画/☆3未満

評価基準

 ☆で5段階評価を行う。基準値は☆二つ。ただし☆一つでも単純に駄作という意味ではない。☆五つは座右の書となるレベルで年に一冊出るかでないか、☆三つからが推薦書

 一番重要なのは「僕が読んで面白かったか否か」という点。他人の評価は原則として考慮しないので正反対の評価ならば価値観が異なるということであって僕の推薦書を読んでも得るものは少ないだろう。逆に広く評価が近いようであれば僕の推薦書を読んでみる価値はある。もしブックガイドとしてこのblogを使うならこういう使い方がベターだろう。

 自分のメモとして書いているので誰も見なくても構わない、と言っても嘘にはならないと思うのだが読んでもらえばやはり嬉しいし緊張感も出る。このblogがきっかけで生涯付き合うことになる一冊に一人でも二人でも、巡り会えればそれ以上のことはない。

☆の目安 (4+以上は殿堂入り
評価なし 50点未満 面白みがなく得るものもなかった駄作。
☆ 50-60点 とりたてて読む必要はなかったが得るものはあった一作。
☆☆ 60-70点 他人に薦める程ではないが自分としては楽しめた作品。
☆☆☆ 70-80点 面白くて得るものも多くあり他人に薦められる良作。
☆☆☆☆ 80-90点 感動モノ。必読。読まなきゃ損。自分史に残る名作。
☆☆☆☆☆ 90-100点 生涯のバイブルであり座右の書となった傑作。

 なお原則として☆ひとつにつき200文字という字数制限を設けて書いている。
[PR]
# by gogayuma | 2005-01-22 04:37 | 日記・雑記

☆ 映画『ハウルの動く城』宮崎駿監督

ハウルの動く城
ISBN : B00009B8MC


 日比谷スカラ座で見たが正直言って期待はずれ。映像は文句なしで光や炎は見たことのない描き方。音楽もすばらしくさすがは久石譲と思わせる。けれども、肝心の映画そのものが心に響かない。何を描きたいのかが伝わってこない。ストーリーの説明不足によるリアリティの欠如、そして対立軸の不明確さが致命的。無駄な展開と陳腐な結末。人形時のカブやカルシファーは好きになれるキャラ。だが監督が欲張りすぎ。事前勉強を推奨。
[PR]
# by gogayuma | 2005-01-22 04:34 | 映画/☆3未満

☆☆☆ W・S・モーム『雨・赤毛 他一編』 サマセット・モーム

雨,赤毛 他1篇
サマセット・モーム 朱牟田 夏雄 William Somerset Maugham / 岩波書店
ISBN : 4003225414


 モームを知ったのはごく最近で『読書案内』(モーム・岩波文庫)における文学観に興味を覚え実際に作品を読んでみようと思い購入。『人間の絆』や『月と六ペンス』などを先に読むべきところなのだろうが久しぶりに短編を読みたかったこと、数ヶ月後に訪れる予定の南洋関連のサイトで紹介されていたことが理由でこちらを優先させた。読者を楽しませることが小説家の使命であると言い切る作者への期待を裏切らない面白さだった。

 クライマックスは絶妙。言い換えれば必然的。そこへむけてのストーリーは明確で計算済み。つまり分かりやすいがトントン拍子。先は読め伏線の張りすぎてオチは予測できてしまう。だが、モーム自身がそれこそあるべき小説と言っているし、それでいて扱っている内容は宗教、愛、道徳、善悪、差別、時、金(経済)等にまで及ぶのだ。事実『雨』では笑い『赤毛』では驚き『マキントッシ』では涙した。展開と描写が秀逸なのだ。

 このクソ忙しい現代に作者のねらいを汲みとろうとする読者は皆無だ。ならばいっそのこと伝えたいことを絞って明確に提示するという手法はかなり実際的ではないだろうか。
[PR]
# by gogayuma | 2005-01-22 04:32 |    ∟W.S.モーム