☆☆☆ 高橋源一郎『一億の三千万人のための小説教室』

一億三千万人のための小説教室
高橋 源一郎 / 岩波書店
ISBN : 4004307864


 既に書かれた小説は過去のものである。小説を書くという試みの原点は、今ある世界に対する疑問ではないだろうか。過去の総体である現在に違和感を感じ、なんとか乗り越えようとする。そうした切実な思いが作家に筆を取らせる。小説は根底において未来に属するものなのだ。「少し長いまえがき」にはだいたいこのようなことが書いてある。

 小説作法には哲学がある。それを通して小説の深いところでの面白さを知ることができると以前書いた。まさにそのような本である。購入のきっかけは保坂一志の著書(『書きあぐねている人のための小説入門』)での紹介。これ以外にまともな小説の書き方マニュアルはないとあり、小説作法書フリークとしては買わないわけにはいかなかった。

 技術的なことはどこにも書かれていない。作者はこう語るだけだ。口まねをしろ、と。考えてから言葉が生まれるのではない。赤ん坊がそうであるように、言葉は口まねから生まれる。そこで大切なのは好きでたまらない本と出会うこと。口まねは消化するための手段だ。好きなものを食べる。本当に自分に合うものは血肉として自分の一部になる。うまく吸収されなかったものは肥料として蓄えられる。食べて、食べて、食べまくれ。

 朗読は時間がかかる分、読んでいることを忘れるくらい物語の世界へ入りこめる。少し前のブームはそれが廃れていることのあらわれだろう。読み聞かせ、楽しいのにね。
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by gogayuma | 2005-02-02 12:36
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