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☆☆☆+ 映画『カッコーの巣の上で』ミロス・フォアマン

カッコーの巣の上で
/ ワーナー・ホーム・ビデオ
ISBN : B0007IOJSY


 昨日に続いてチェコにまつわる話。今日は映画。ハリウッドで現在最も活躍している(亡命)チェコ人映画監督、ミロス・フォアマン。この後に『アマデウス』を撮っている。笑いあり涙ありの作品にも関わらず、見終えると心のわだかまりが解消するどころか余計にもやもやとする。名作である。原作はケン・キージー。ヒッピー文化の先駆者とのこと。人間の自由と尊厳が基本テーマ。刑務所から精神病院に移された主人公が、婦長をはじめとする病院側の独善的なやり方に反抗するという流れで話は進む。

 ジャック・ニコルソンがハマリ役。僕は演技に魅せられることは滅多にないのだが、あの笑顔にはかなわない。患者仲間達も個性豊かなキャラクターを名演(誰か一人と言われたら、やはりインディアンの末裔を挙げたい)。敵対する婦長のこれでもかと言わんばかりの憎々しさには本当に腹が立った。・・・自由とは。尊厳とは。そして正義とは何か。

 カッコーという鳥は自分の巣を持たない。他所の巣にある卵を一つ蹴落として卵を産む。しかも非常に早く孵化するカッコーの雛は他の卵すべてを蹴落とす。閑古鳥とはカッコーのことだ。寂しい泣き声に加え、巣のさびれ具合をもあらわしているのだろう。

 カッコーとは英語で気が触れた者という意味。カッコーの巣とは精神病院のメタファーだそうだ。僕は巣の上のカッコーになぞらえたのかと思ったのだけれど。

 ・・・追記 実はカッコーの巣になぞらえたこと自体は間違いではなかった。カッコーは育ての親を本当の親だと思い、育ての親もカッコーのことを本当の子だと思う。カッコーの巣とはこうした非本来的な関係であり意味的には存在しない場所である。つまりカッコーとはかりそめの秩序に疑いを持たずに生活していた精神病患者達であり、その巣に進入してきたマクマーフィーの「外へ出て真実を見ろ」という呼びかけこそが主題であるようだ。
by gogayuma | 2005-01-22 04:44 | 映画/☆3以上
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